「ペフイエゥン」
なんだか、呪文にしたってプスンと不発になりそうな、身体からフニャンと力が抜ける不思議なことば。とある生き物の存在が初めて日本に伝わった時、文献にこう記されました。それから80年ほど後の1790年代には、国内にその生き物の剥製が持ち込まれ、こう書きつけられました。
「ピングイン」
姿が見えてきましたか?
カップメンダコシリーズ待望の新種として選ばれたのは、多くの人に愛される、飛べない鳥。
そう「ペンギン」。
エンペラーの名を冠し、どこか威風堂々と胸を張っているように見えるコウテイペンギン。
親鳥・雛鳥そろって、「カップコウテイペンギン」としてお出ましです。
その鳥、ハイブリッドにつき
日本とペンギンの歴史は、なかなか古い。
生きたペンギンが日本に初めてやってきたのは、1915年6月9日のことだった。宮内省東京帝室博物館附属動物園、現在の上野動物園に寄贈されたと記録に残っている。上野動物園といえばジャイアントパンダのイメージが強いけれど、なんとパンダより50年以上も前に、あの不思議な鳥を受け入れていたのだ。なお、この時にやってきたのはフンボルトペンギンだったという。
以来、ペンギンは親しみのある存在となり、生活のいたるところで見かけるようになった。業務用の製氷機や冷蔵庫の扉の片隅に。あるいは、かき氷機のモチーフそのものに。叩いて中身を破るとひんやりする瞬間冷却材や、クールマフラーに描かれているのもよく見かける。南極圏という、氷で覆われた未知の大陸に棲み、極寒の中で子育てをする種もいるペンギン。彼らが「冷たい」「ヒンヤリ」の代名詞になるのは、自然な流れだったのだろう。
しかし。
カップメンダコシリーズの看板を背負う以上、それでは務まらない。熱々のお湯を注いだカップ麺の上にも3分。ものによっては5分、鎮座してもらわなくてはいけないのだ。この待つと長く感じる時間を、動じることなく威風堂々と。
そんなわけで「つめた〜い」も「あったか〜い」もイケる、ハイブリッドペンギンが誕生した。
カップコウテイペンギンのいる生活
カップ麺はもちろんのこと、あったか〜いコーヒーやスープが注がれたカップにも、ぜひ乗せてみてほしい。保温効果はないけれど、飲み物にホコリが入るのを防いでくれる。つめた〜いものが飲みたい時にはグラスにちょこんと乗せれば、保冷効果はないけれど、より冷たく感じるかもしれない。人間の脳は、意外と騙されやすいと聞く。
「もっと愛でたい!」という方は、一緒にお出かけしてみてもいいかもしれない。ちなみに、2017年のデータによると日本では約4000羽も飼育されていて、これは世界でもかなり多いのだそうだ。ペンギン大国・日本!こんなコラボもお手のもの。
そういえば、28年前に放送され今でもコアなファンを持つ某アニメには「新種の温泉ペンギン」なるキャラクターが登場した。ペンギン=冷たいというイメージを覆した、この温泉ペンギンの飼い主である紫髪の彼女は、こうも言っていた。「風呂は命の洗濯よ♡」と。カップコウテイペンギンと風呂を共にするのもまた一興。
ただし浴槽へ一緒に入ろうとすると、かなり切ない姿を見ることになるので、あまりおすすめはしない。「天は二物を与えず」と言われるとおり、温冷ハイブリッドという特性と引き換えに、どうやらカナヅチになってしまったらしい。
なお、コウテイペンギンのヒナは孵化後5ヶ月ほどは親ペンギンに守られ、すくすくと大きくなっていく。孵化したばかりのカップコウテイペンギンは、親ペンギンと一緒に捕獲してあげると、きっとよく育つだろう。