つい先日、近所の雑木林を縫うように走り抜けた先の丘の上から、遠くでフラッシュする稲光を見ながら暗黒について考え込んでいたら、ダイオウイカッターには続きがあることに気づき、そしてすべてが繋がりました。
「マッコウクジラ、倒せます。」のキャッチコピーで一時的に一世を風靡したことのあるダイオウイカッター。
この黄金のペーパーナイフは紙を切るだけでなく、一振りすればマッコウクジラを倒すことができるアイテムです。
しかし、「倒す」という行いは実に曖昧なものだと感じ、気になって辞書をひいてみました。
立っている物に力を加えて傾け、横にする。
確かにこの行為は「倒す」ですね。
ただ、ゲームや漫画の中の闘いの場で「敵を倒す」というと、相手のHPがゼロになったり、恐れをなして逃げ出したり、点滅して消滅したりと、意外と最後まで見届けられず、息の根までは止めていない場合が多くありませんか。
そうなんです。
ダイオウイカッターは、いくらマッコウクジラが宿敵とはいえ、強い殺傷能力を発揮する必要はないという考えを持った加減を知っているちょっと優しいイカで、食べられさえしなければよいのです。
今度会ったらまた闘おうね。
そんなニュアンスでの「倒す」なのです。
ところが、深海マザーから生まれてくるダイオウイカッターの中で、そんな生ぬるいやり方では納得しない個体が出てきてしまいました。
いわゆる突然変異というやつで、親を喰われた恨みが増幅して復讐心を抱いてしまった個体です。
その強力な怨念が闇となって噴き出し、自らの身体が闇に侵蝕されていきました。
そして、黄金の身体が蝕まれていく途中で、殺傷能力を持つ魔刀となってしまったのです。
マッコウクジラ、仕留めます。
倒すだけでは物足りない危険なダイオウイカッターは、マッコウクジラを最後まで追い詰めて仕留めるための変異を遂げました。
魔刀ダイオウイカッター・エクリプス、新種として発売いたします。
さらに伝説は続きます。
エクリプスは闇に包まれ始めた途中段階ですが、次回は完全に闇に侵蝕されて支配された「完全侵蝕暗黒大魔刀ダイオウイカッター・コンプリートエクリプス」を発売します。
コンプリートエクリプスは、エクリプスで仕留めたマッコウクジラを闇に葬るために変異した暗黒刀です。
発売時期は、新たな闇が現れ次第お知らせいたします。
ところで、冒頭で「繋がった」とありましたが、まだ先がありました。先があったというか、先に先を作ってしまっていたようです。
これを装備されている方はほとんどおられないかと思いますが、数年前に妖刀ダイオウイカッターという陶器製のペーパーナイフを発売しました。
こちらは、マッコウクジラの亡霊を倒すと言われています。亡霊になってもなお追い詰めて倒すというダイオウイカッターの執念深さが現れています。
これを発売した時はあまり深く考えていませんでしたが、まさかここに繋がってくるとは思いもよりませんでした。
マッコウクジラに遭遇したら倒す
倒してから仕留める
仕留めてから葬る
葬り亡霊と化したところでさらに倒す
どこまで追い込めば気が済むのでしょうか。
そんなにマッコウクジラが嫌いですか。
これは、ダイオウイカvsマッコウクジラという割には、ダイオウイカは喰われるだけじゃないかという切なさに同情して私が描いた、ダイオウイカをマッコウクジラと対等にしてあげるための壮大な深海物語なのです。