今年の年明けは深海生物で賑わっている。恐らくは、以下のような3つの大きな話題が原因だろう。
まずは特別展「深海」。
この大きな舞台で深海がどう表現されるのか、どのぐらいの人を引き付けるのか、興味が尽きないが出来れば初日に行って何時間も全体を見渡してみたい。
次のダイオウグソクムシ、そろそろ食べようよという思い虚しく、喰わないどころか餌をはじき飛ばしたそうではないか。なんとも愛らしい大王様だ。
そして、深海生物として知名度ではダイオウ級のダイオウイカ。そのくせ深海で生きる姿を誰も見た事がないという、とても人間の興味をそそるイカに、ついに世界で初めて深海で出遭えたらしい。
深海元年になると言わんばかりにこれらが今、沸騰し続けている。凄まじい盛り上がり方だ。しかも予期せぬ事とはいえ、私もある形で一枚この話題に噛んでしまったのだ。
それは、ダイオウイカ
1月13日Nスペで「世界初撮影!深海の超巨大イカ」と称し、ダイオウイカの特番が組まれて放映された。元々の深海ファンはともかく、一般の人たちも大いに感動し、深海へのドアを叩いた人もいることだろう。
この時のNスペの視聴率は驚異の16.8 %
とてもイカの視聴率とは思えない。イカだよ?イカ。こんなにもみんながイカに注目する瞬間があるだろうか。そしてこの裏番組として映画「アバター」が放映されてたのだが、カワイそうなので視聴率は調べていない。一人で深海に挑んだジェームズ・キャメロン監督もダイオウイカに喰われてしまったようだ。
ところで放映前に、番組告知のためのこんな看板が設置されてたという。なんと設置場所は渋谷駅の東急東横線ホームだ。(写真提供:カレンダー深海生物図鑑制作スタッフさん)
じらすだけじらす |
実物大ダイオウイカ |
放映後、姿の消し方も深海らしい |
去った看板に向けて、こんな替え歌も畑に降り注ぐ。
作詞:カレンダー深海生物図鑑制作スタッフ
東横線・渋谷駅のホームに行かないでください
そこに私はいません
死んでなんかいません
深海のイカに
深海のイカになって
あの大きな深海で
泳ぎまわっています
そんなこんなでイカイカした翌日の14日。
大東京大雪降臨。
窓の外を見ると、東京特有のボッタンボッタン雪が猛烈に降り注いでいる。その光景を見た瞬間、脳が何かに支配された、イヤ、寄生されたと言う方が正しいのか。衝動的にTwitterに「探さないでください」とつぶやき、スコップを担いで表へ出ていた。
2時間後気付いたら出来てたのが「雪ダイオウイカ」。コレを展示作品にして、展示場所は「東京」のどこか、形がなくなるまでの期間とした。雪の刺激により真っ赤になった手の指先だけが青白く、うずくまる程の激痛が指先を襲う中、SNSでこの写真を共有した。
東京ボタ雪ダイオウイカ |
その結果、コアな深海ファンなら分かると思うが、深海ネタとしてはギガント級の反響があり、あれよあれよと広まっていった。最初は本当にTwitterのバグだと思っていたのだが・・・
Twitterでのあり得ない反響 |
やがてバグじゃない事に気付き、即座に撮った写真をHPに載せた。なんてヒマなのだろう。
夜になり、雪ダイオウイカは長時間人目に晒されたストレスにより、足を自切して自らイカメシになる道を選んだことで、展示に終止符を打った。
やっぱりイカメシがイイカ |
その翌日15日になっても勢いは留まる事を知らず、とうとう事件が起きてしまった。この流れを見ていたテレビ局の人がいて、雪だるま特集で紹介したいというのだ。まぁ、写真がチラッと出るだけならと了承した。これがその時の動画で、問題の映像は36秒ぐらいのところから始まる。
気になったのが ”巨大イカ” じゃなくて、当たり前のように ”ダイオウイカ” という名前で紹介していることだ。それだけダイオウイカは世間に精通してるということなのだろうか。前日のNスペの影響なのだろうか。さすがはイカの大王である。
その後、犬の暖かい温かい黄色湯と、近所の子供たちの心のこもった蹴りで、雪のダイオウイカはとうとう朽ち果て、最後は横に倒れこんで姿を消した。ありがとう。
落ち着いたところで、いよいよ録画してあるNスペを見ることにした。流れ的にNスペを見て雪ダイオウイカが出来上がったのだろう、という予想を裏切り、実はまだこの時点では見ていない。録画された私のダイオウイカはまだハードディスクの中で ”0 と 1” の状態で眠っていた。
まずは研究者たちのテンションがいちいち面白くて笑える。豊かな人を見ると、こちらまで豊かになる。なんやかんやのあれやこれやで、ついにダイオウイカの降臨シーンになる。ここからしばらくテレビから、というよりダイオウイカから視線を離せなくなる。ロックオンされたようだ。こちらに何かを話しかけてるようにもみえる。もちろん対面してるのはダイオウイカ研究第一人者の窪寺恒己博士なのだが、人間という単位に対してなにかを伝えようと、そんな風にも感じられた。
詩:深海マザー
ここからずっと見つめてた
あなたの清んだ魂を
よくここまで近づいた
私と会うのはここでだけ
光があるのは闇にのみ
どんな時も思い出して
こっちへおいでなさい
怖がらないで大丈夫
あなたの限界知っている
止まった時を楽しんで
今この瞬間楽しんで
イカジュースのお礼だよ
ではまたな
王のもとへ帰らねば
まぁ、こんな感じ。
最後に窪寺恒己さんと研究者のみなさんへ。
すばらしい映像を見せてくれて感謝します。本当に長かったと思います。いつの日か、王に会えることを祈っています。