愛とチムニーの日々

一つの終わり

我輩は、絶望である。

今、深海グッズが売れている。
1~2年ほど前と比べると、種類や形態の豊富さ、それと深海に対する認識や興味の強さに明らかな違いを感じる。
「深海ブーム到来」と言っても、さすがに誰もその言葉を疑わなくなったであろう、華々しい深海ブームの真っ只中に突入した。しかしそれと同時にボクは一つの終わりを感じた。

東京の渋谷が、2月22日から「東京渋”海底”谷」へと変わり、4月6日で「東京渋谷」に戻る。
深海をテーマに、飲めて食えて買えるというカフェ形式をとった初の試み、東急ハンズ渋谷店×JAMSTEC「深海ラボカフェ」が大絶賛開催中である。

どんなモノかとザッとまとめると、JAMSTEC制作の熱水噴出孔ジオラマや、深海生物標本の展示、深海カレー(熱水噴出孔カレー)や深海ラテ(メンダコラテ、ダイオウイカラテ)など深海モチーフの飲食、JAMSTEC公式グッズや企業が販売するグッズ、手作り作家が作り出す深海グッズ、JAMSTEC研究員によるワークショップなどが主な内容である。

うさん臭さ抜群のレポートはこちら。
【公開終了】JAMSTEC×東急ハンズ渋谷店「深海ラボカフェ」潜入レポート

今回はこの「深海ラボカフェ」のレポートではなく、ボクも関わっている「深海グッズ」という小さな世界において考えさせられたことがあったので書き出した。

今や、深海生物や潜水調査船などをモチーフとしたぬいぐるみ、フィギュア、ストラップ、マグネット、ガチャガチャ、印刷ベースの物まで何でも出てきた。深海グッズなどほとんど存在しなく、出現した瞬間何にでも喰らいつき、静かな時は我慢してヘドロで食いつなぐ時代を生きてきた底生生物(隠れていたが最近発見された深海ファン)にとっては、現状あれも欲しいこれも欲しいと目移りばかりするようなラインナップが一気に出揃い、さらにはセンスや金銭面などと相談してどれに喰らいつくかを冷静に選べるような状況にもなった。

売り場には、1~2年前のアイデアがやっと形になったような物ばかりが並んでいるように見える。それはきっとそういうモノなのだろう。問題は、現時点から1~2年後、ではなくてもいいがさらに先、その時に形になっているであろうモノがどこかの誰かの頭の中で創られているかどうか、だと思う。

以下は、売れているグッズの代表的な特徴だが、これらに加えて新しい要素を加えるのは容易なことではない。

  1. 巨大深海生物を実物大で再現し、インパクトを持たす
  2. レアな深海生物をモチーフに選ぶ
  3. ダイオウイカ、ダイオウグソクムシ、メンダコの三つ巴
  4. 無駄にデカい、あえて使いにくい仕様

1は、ダイオウイカやダイオウグソクムシのぬいぐるみで驚き済みなので、もう他の深海生物を対象にしてやっても驚きは少ないだろう。
2は、とうとうスケーリーフットがガチャガチャとして商品化された。数年前だと採算の問題で危険生物だったに違いないが、今ではさほどレア感がなくなって身近になりつつある。近い内に熱水の生物のみならず、鯨骨の生物までも出てくるのであろう。
3は、喰らいつく理由が多様で、浅くも深くも親しめる生物たちだ。映像や実物を見たことのある人が多いことも人気の理由の一つだろう。
4は、今の時代に合ったデザインだと思うが、そろそろ発想自体に ”飽き” の香り漂う。

じゃあ次行こうか、と思っているが、見えない。色んなのを見たり感じたりしてる内に、いろいろと臆病になってきた部分も無くはない。”商品” となると難しい部分がたくさんあり、アイデアが浮かんでも形にできないことがほとんどで、「卵は産まれたけど殻の中で死んじゃったかも」というモノの残骸をゴミ屋敷のように捨てないで取っといてあるが、いつか生まれる日が来るだろうと思い続けながら、きっとボクは死ぬのだろう。

しかしながら、ボクは「深海”マザー”」という名を不用意に名乗ってしまった。この責任はとらなくてはならない。現実に大した事はできないのだが、一人の人間に備わる力というのを見てみたい。「自然が創る芸術品」とは言うが、自然の物は全て芸術品であり、あえて言うことでもない。しかし人間においては自然の一部でありながら、芸術品を創り上げるには様々な修行が必要なようだ。しかし、誰もが自然の創造と同じレベルのモノを創れる能力を持っている、と思っている。
それは、自分の中のみで実験が許される。

自分も含めた、人間が楽しめるモノを創りたい。
たとえそれが一瞬だとしても。

愛とチムニーの日々

深海にある熱水噴出域はね、極限環境って呼ぶんだって。
そうゆうの以外にも、違った意味での極限環境が思ったよりもずっと身近にあるんだよ。
例えばみんなが住んでいる家の中とかね。

 

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