師走!(シワッス!)
毎年この時期になるとなぜか ”年末の匂い” のような薫りを嗅ぎつける。一体何を嗅いでいるのだろうか。天体的な区切りのようなモノが感じ取れているのだろうか。何にせよ、意識の世界ではない。
サイエンスカフェという催しに初めて参加してきた。
12月15日の夕刻、古生物学者であるロバート・ジェンキンズさんによる「ジェンキンズ先生の深海探険物語」が、神奈川県逗子市の世界一小さな科学館「理科ハウス」で行われた。
十分な余裕を見て出発したにも関わらず、なんと20分も遅刻してしまったのだ。
高速道路でね?どっかの空気が読めない若者がね?カーブで路肩に乗り上げちゃってね?タイヤがホイールごと取れちゃってね?コロコロと転がってたんだよ?それをね?みんなが眺めながらね?通過するからね?詰まっちゃうんだよ?こんなに詳しく事故風景を言えるのはね?ボクも眺めてたからなんだよ?
理科ハウスさん、ロバートさん、並びに会場の皆々様、深くお詫び申し上げます。
そーっと入場すると、ロバートさんが笑いながら熱弁してるのが見えて、客席からも笑い声が飛び交っている。そして予想に反して小学生ぐらいの子供たちもいるではないか。子供にも分かる話なのかな、と疑問視しながら聞いていると、やっぱり自分の感覚では子供に分かるとは思えない。しかし子供は話にのめり込んで、笑ってさえいる。理解しているのだ。むしろ自分よりも詳しいのかもしれない。
大人になるとどうしても「子供には分かるまい」的な考えで子供に接し勝ちだが、それは誤りだ。すでに生物としては出来上がっていて、人間である。ロバートさんの演説にはそういったいわゆる子供に分かりやすく・・・みたいな配慮が全く感じられなくてとても良かった。もっとも研究者レベルから見たら、みんな子供のようなモノなのだろうが・・・
そうそう、内容はね?
ロバートさんが研究してるのは ”キヌタレガイ (Solemya pusilla)” という、深海底の地中に巣穴を掘り、噴き出す硫化水素からエネルギーを得て暮らしている二枚貝。その生態などを調べる為に、なんとその巣穴に樹脂を流し込んで硬めて取り出そうと試みが成功。その研究成果や舞台裏、苦労話などをおもしろおかしくサイエンスカフェという形でみんなで共有しようということ(多分)。
そしてその画期的な樹脂を流し込む装置、その名は、
アナガッチンガー
詳しくはこちらの動画を。
スッゴイですね、素晴らしいですね。
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アナガッチンガーの実物 |
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アナガッチンガーの鞘 |
樹脂は2つの液体を混ぜ合わせて硬化させるタイプで、このアナガッチンガー内で混合させる。「なつしま」上で混ぜる訳にもいかず、深海底で混ぜざるを得ないとのこと。苦労したのはその樹脂の比率。やはり高水圧下では硬化条件が異なるため、試行錯誤の末の成功だそう。
まぁ、これは仕方ない事ですが、当然巣穴に棲んでいるキヌタレガイも樹脂に溺れて巣穴ごと硬化する。少しだけ貧しい気持ちに・・・。
そんな時なにかの話中に、話を盛り上げようとするロバートさんの 「そこで○○○○○はどうなったと思いますか!?」という問い掛けに対し、小学生の女の子が「そんなのこっちが言っちゃったら話が終わっちゃうジャン」という ”左ストレート” が決まった時のロバートさんのKOっぷりが鮮やか過ぎて、キヌタレガイの貧しさもどこかへ殴り飛ばされていった。
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アナガッチンガーを抱えながらKOされるロバートさん(奥)と、女子小学生の左ストレートの威力に圧倒される男子小学生(手前) |
それから、お茶の時間に理科ハウス学芸員の山浦安曇さん(本名不明)が、とてもクリエイティブでステキなカップケーキを手作りでご馳走してくれた。
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アナガッチンガーカップケーキ群 |
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そしてステキ過ぎるのが、刺さってるナッツがシロウリガイなのである |
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紐を引っ張ると、キヌタレガイの巣穴をガッチンガー! |
楽しい深海話も終わってしまい、いよいよロバートさんへのサプライズプレゼントを渡す。ロバートさんとは実は先日の深海イベント「しんかい-深きものども-」で一度お会いしていて、その時にシロウリガイを欲しがっていたので、今回良い機会に恵まれて贈ることにした。
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このシロウリガイ、底に両面テープが仕掛けてあり、自作のシロウリガイプリント紙袋に数個入れてプレゼント |
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こんな風に壁に埋まってるように見える |
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埋まれそうもない、懐かしい二つ折りケータイにも埋まれる |
手渡したら・・・
ロバートさん、喜んでくれた!よかった!これで安心して眠れる・・・zzz
それから、理科ハウスの館長と、観覧にいらしてた葉山しおさい博物館の館長にもプレゼントしたらあっさり貰ってくれた。
感無量。
この様子は理科ハウスの記事にも掲載されている。みんな豊かそうに話を聞いている風景が描かれているが、本当に笑いが耐えることはほとんどなかった。
この日の終わりに、小学生がいたのにプレゼントできなかったやましい自分を連れて、濃霧に包まれた帰り道の中でアクセルを踏んだ。