みんなで何かできたらイイねェ・・・。 -深海マザー代表
当時(現在も)、SNSに依存しきっていたボクは、このぼやきを聞くと同時に、ある情報が目に入り、それに対して条件反射的に質問を投げつけていた。
JAMSTEC一般公開の舞台で、それは可能でしょうか
その時はなんだか、いろんな人達が深海を表現、というか自己を表に出したがっているように見えていた。この微小集団のことはゾクに深海クラスと呼ばれている。勘違いだとしても、そんな風に感じた景色を黙って見ていることは出来なかった。すると、正面玄関があるからそこから入ってみたら、という回答を頂けた。それはそうだ。窓から土足で侵入しようとしたことをお詫びします。
すかさず代表が特攻隊長として、鬼門とも言えるJAMSTEC広報課の扉を叩く。もう叩いただけでその辺から突き出たヘビメタチックなトゲで負傷しそうなイメージがある。しかしそれとは裏腹に・・・というのを期待していたのだが、やはりイメージに近いご回答を頂いてガクブルと震え上がった。ご担当はもちろんメガネが光ることでお馴染みのヨシザワさんである。
「おもしろそうですねぇ、しんかいレポーターの発表という位置づけなら可能かもしれません。しかし私が想像できてしまうような表現を超えたいですねぇ……キラン」
それから一ヶ月半ぐらいの間手紙が届くことは無く、二人でやっと見つけた雪山の洞穴の中を覗き込み、熊がいない事を確認して潜り込み、しばらく震えながら過ごすことになった。
その頃、ボクらはなまけっとというイベントに出させてもらって、その成果として得た重量挙げのダンベルのように重たいモノを背負いながらも、なんとか上手く下ろそうともがいていた。売り物に関しては今までの創り方を一新し、もうちょっと製品らしくしようではないかということで、イベントで得たお金を全額投資して立ち上がろうとしていたのであった。
とぼとぼ歩いていると突然効果音が流れ、海洋の巨人(金棒装備)が現れた。
「東急ハンズ渋谷店とJAMSTECでコラボカフェをやります。期間は1ヶ月半程度ですが、よろしければ物販の方で深海マザーさんをご紹介させて頂きます」
ハ、ハハハ、ハンズですか、し、渋谷ですか、ええ、ありがとうございます、ぜひよろしくお願いいたします!
想像していたモノとは大きく異なる企画を伝えられ、ここ最近身近に感じてしまっていたJAMSTECという組織の大きさに、「もっと離れて見てみろオラッ」と金棒でレフト前へ引っ張られ、フェンスに直撃して倒れこんだ。そのままぼんやりとした視界でホームベース方向を眺めると、ちょうど巨人(ジャイアンツではない)が走りこんでホームインした様子が見え、放り投げられた金棒はまだ宙を舞っていた。その後改めてその大きさに気づかされたのだった。
それがこの企画。
2月22日~4月6日
JAMSTEC×東急ハンズ渋谷店
深海ラボカフェ
ここで、実はどうでも良さそうでどうでも良くないことが浮上している。JAMSTECと東急ハンズ渋谷店のコラボ企画なのだが、「●●●●×●●●●」の書き方についてボクらの立場上、実はかなり悩ましい部分なのである。お二方は謙遜の意味か、それぞれご自身を後ろに書いているのだが、ボクらがこの順番を決めるということは、なんか贔屓目で見てるんじゃないか、どうせそっちの見方なんでしょ、結局どっちなんだよこのお調子モンが!みたいに思われないだろうかなどと、要らぬ心配をしてしまって地球の物質大循環のような状態に陥ってしまう。
記憶では、最初にお話したのは自信を持ってJAMSTECと言えるので、ボクは先にJAMSTECを書くことにしているが、代表はその辺は何も気にしてなさそうだ。
ホントどうでも良さそうでどうでも良くないことでしょ?
第零弾 初顔合わせ
東急ハンズ渋谷店のエレベーターを7階まで上がる。降りた先にはこじゃれたカフェがあり、「HINT7」という空間内にSCIENCEの文字や、科学をモチーフとした商品がズラーッと並んでいたので、ここが舞台かあ、よろしくお願いします、と入場して企画の打ち合わせに参加させて頂いた。フロア担当の方はアヤちゃん(仮名)というベテランの女性で、現時点では深海のことはほぼ何も知らず、これから勉強していくといった事情の方だった。ボクらのような得体も知れず、分かりにくいだろうと思われる人種だというにも関わらず、とても熱心に話を聞いてくれて、理解しようと必死に努力されているのが伺えたので、ボクも負けじと理解してもらおうと努力した。
もうお一方、ごあいさつに来らた方がいた。見るからにそういうのが好きそうな方で、目をキラキラさせながら「スケーリーフットいいよね~!鉄なんだゼこれオレ一番好きだよこれカッコイイよおぉ」と言って、ボクらの作品であるスケーリーフットのマグネットと「スケおじさんTシャツ」を買うと断言してくれた。聞くところによれば、この企画のためにアヤちゃんと二人でJAMSTECに乗り込んだらしく、そこで何を見たのかは分からないが、口を揃えて「これからJAMSTEC高井研さんの ”微生物ハンター、深海を行く” を読んでがんばります!」と言ってバイタリティーを溢れさせていた。熱心な読者さんはご存知だと思うが、この本は学術書ではなく、青春期である・・・。しかし内容はどうであれ、そういった影響を与え続ける高井さんの存在感、偉大さを目の当たりにすることが出来た。もちろん後にこの二人は熱烈な高井ファンとなる。
こんな方達がこのフロアにおられると思ったら、なんだか希望と共にワクワクしてきた。後に本当にスケおじさんTシャツを買って、しかも制服の上から着用して毎日その姿(ベルトには黒スケが貼り付いている)で仕事をされてたので、スケおじマネージャー(仮名)とお呼びすることにした。
深海クラスのことも踏まえ、たくさんの制限の中で自分たちの出来ることは何なのかという部分を考えながら時間を過ごした。
途中からヨシザワさんも加わり、反射的に少し縮こまったが、気を取り直して展示などの部分もやってみたいという意志も示してみた。しかし、あまり出しゃばってもご迷惑をかけてしまうだろうと思い、ダメモトアイデアを出してみつつも、「店名は超臨界カフェなどいかがでしょうか…」に対しての「それは物理用語ですねキラン」でトドメを差され、展示はJAMSTEC、一部の物販商品の提供を深海マザーという形で担当させて頂くということになった。
もちろん物販という任務は他の深海グッズメーカーさんたちも含めての話である。いわゆるCawaii系のグッズがほとんどだということで、アヤちゃんがボクらに求めてきたモノは、Cawaikunai系グッズ、要するに黒さ、鋭さ、キモさ、貧しさ、そういった深海のイメージに近いリアルさを持ったグッズで、バリエーションも豊富であり、しかも手作りの作品だった。それらをメインとなるCawaii系グッズの裏側に置きたいという濃厚なヴィジョンがあり、その目に広がる視界にボクらを入れてくれたという事実は本当に嬉しい事だったが、実際に商品を陳列するスペースに案内され、ここを埋めて欲しいのだと言われたので見てみると、
ひ ろ す ぎ る
幅2メートルぐらいの棚が二段になっていて、ここに高密度で商品を並べなくてはならない、不必要にポップや装飾で誤魔化して隙間を埋めることなんて許されない。ここは渋谷、一等地、目先には松濤、財閥ウヨウヨ、ショバ代ハンパない、監視カメラで見られてる、売り上げられなきゃ抹消される、ボクら二人じゃ絶対無理、誰か助けてヘルプアス!といった妄想が頭の輪郭に沿って電気が走るように一瞬で抜けていった気がした。
そうとなれば、深海系の作家を数人しか知らないボクらにとって、協力を求められる人は限られていた。
- 深海系作家
- Cawaikunai系(一般的目線で)
- ある程度以上の販売体制有り
- 打ち合わせに参加できる
- 少しでも知ってる人
この条件に一致する作家を二組だけ独断と偏見で選ばせて頂き、アヤちゃんに作品の写真を見てもらったら、とても気に入って頂けたようだったので一安心。
一人目は深海陶芸家であるメンダコ屋の有麒堂さん。陶器だけあって高級感があり、ギフトなどにも利用されそうなので、バリエーションの一つとしてはもってこいだという。
二人目は深海デザイナーを目指し、深海生物を家紋で表現した「深海ノ紋」を展開する佐竹さん。ファスナーアクセサリーやステッカーなど2Dベースの比較的安価な商品が多く、デザインもCawaii(おや?)ので売れ筋になるだろうという。
そしてボクら、深海家具屋である深海マザー。世界観は出したいですねふふふ…。どうやらあまりコメントが見つからないらしかったので、こちらもフッ…フフフ…といった会話となった。
この三組がチームで作品を提供し、全商品の1/3程度を占めなければならない。打ち合わせをしたが、この期間で何を何個作れば良いのかという部分に全く結論が出ないので、アヤちゃんにも相談を持ちかけたが、「深海に関しては全くの未知数なので、参考になるモノがありませんよね~♪」ということで、とりあえず最初はある程度ドバッと納品して二週間ぐらい様子を見てみましょうということになった。ドバッて数字じゃないな・・・。
実はこのような形で複数の深海系作家が作品を並べること事態が初めてのことで、場所もメジャーデビュー的要素が強い。何をどうしたら良いのか分からないことだらけだった。色んな意味での ”試作” になるということを薄々感じながら、行く末をみんな楽しみに解散した。
結局、モノを売らなければならない、東急ハンズ渋谷店に売り上げを、という使命から、他のジャンルの音楽やイラストなどで活躍してみたかった方たちをお誘いすることができず、今でも少しだけ心残りがあるのだが、ヨシザワさんが闇の中で見た光はそんなことではなかったのだと、最後に知ることになる。
三組の告知画像 デザイン:佐竹 |
第一弾 かもしたぞー!深海生まれの日本酒ができました 3/7-19:00
1ヶ月半のことをダラダラと書ききれるわけもないので、毎週ではないがJAMSTECによるお仕事お疲れさんトラップ「金曜日は深海ナイト!JAMSTEC特別トークイベント&ワークショップ」が全四回に渡って仕掛けられたので、それにスポットを当てて書きたいと思う。
注目の集まる深海ラボカフェ初のイベントは、日本酒の試飲である。
水深1200メートルの深海底からエタノールを生産する酵母株を発見し、この深海酵母を産業利用しようと日本酒作りに取り組み、出来上がった深海酒を振舞ってくれるという、酒好きには顔が綻ぶような良心的でありがたい企画である。
ボクは強くはないが、酒が好きだ。普段は酒がメタンのように湧いたり、熱水のように噴き出さない限りは飲めない環境下に置かれているので、このような機会は正にボクにとっての熱水噴出そのものだった。
夜の時間が近づくと、やはり噂を聞きつけた人達がゾロゾロと集まってきた。皆それぞれの飢えを凌ぐため、乾きを潤すためにやってきた。ヨシザワさんたち広報課も、どれどれと見学(仕事)に来られていた。事前予約でテーブル席と椅子席の選択があり、ボクと代表は椅子席を取っていたので着席した。
しんかい6500のパイロットが着用する戦闘服(イベント用)を着たアヤちゃんによる仕切りで開かれた。講師は北見工業大学の小西正朗さん。JAMSTEC研究員として、乙な酒の呑み方、深海酒に良く合う深海魚などの旨い肴を紹介してくれる・・・と思っていたら違った。いえイイんです。当然です。
要するに、この発見された深海酵母は日本酒のみならず、焼酎、ビール、ワインなどの酒類、パンや味噌などにも利用できる可能性があるため、企業や自治体に関心を持って頂いて商品を開発したいので、タダで飲ませるから感想くれ、という主旨だった。
解説が始まると、皆(ボクだけかも)ソワソワし出した。きっと早く飲みたいのだろう、酒を。わかるよなぁ、酒よ。熱心に解説してくれている小西さんに失礼だろうと思いながらも、酒瓶はどこにあるんだと探したりしながらひたすら酒を待ち続けた。
しかし、意外にも早くその時は訪れた。
小さな紙コップに入った酒が2杯配られた。A、Bと書いてある。比較しても見た目も量も変わらないが、2杯も飲ませてくれるのか!しかも結構多めに入ってるぞ!と内心で喜びに駆られた。確認すると本当に2杯とも飲んで良いらしい。
まずはAから頂こうと香りを嗅いでみた。良い香りだ。飲んでみると、うんウマい。
次はBの香りを・・・と思ったら既に香りの違いがあって強さを感じた。飲んでみると、うんウマい。こっちの方がコクがあり、後味も良かった。度数も高そうだ。
聞くとBの方は原酒だそうで、酵母が生きているのだ。深海生物を今、飲んでいるのだ。体に取り込まれていくのを感じながら隣を見ると、代表が酒に手をつけてない。試飲イベントだというのに車で来ていたのだった。まったく、もったいない。ボクが2杯とも飲んで差し上げた。この4杯目を飲んだ時点からボクのモウロウとした時間が流れ始めた。
キク・・・
酔っ払ってきた。あまり酒が強くはないとはいえ、自分のメーターは知っている。なのにメーターの針がビンビン左右に大きく振り乱れ、誤作動を起こしている。こ、これが深海酵母のチカラか・・・!取り込んだと思い込んだ深海酵母に実は寄生されてしまったのか・・・!その時、同じく4杯目を飲んだ人がいるという内線のようなモノが入ってきた。大阪からこのイベントのために来られた、のか、何かの強制力が働いたのか詳しくは分からないが、その方は女性イラストレーターだった。遠くから顔をチラ見すると、何も変わっていない・・・。対するボクの顔はたぶん、せっかく来たからもったいないので長時間温泉に浸かりっ放しの人のようだったと思う。ふわふわと気持ちが良くなっていたその時、
おかわりいかがでしょうか
大量の紙コップが置かれているオボンを差し出された。こんなにあるのか・・・どんだけあるんだろう・・・全部は飲めないぞ・・・と思いながらも手を伸ばして2杯を取って飲んだ。すると気持ち良すぎてモウロウとしてきたではないか。でもとても気分がイイ。
そろそろアンケートをお願いします
そ、そうだよね、飲んだからにはアンケートだよね、と用紙をざっと見渡すと、長い・・・そして細かい・・・AとBに対して色味だの酸味だの風味だのこんなにたくさん項目があるのか・・・文字が熱水ホワイトスモーカーのように揺らめいている中、なんとか答え切ることができた(と思う)。
ちょと水を飲もうと思い席から立ち上ると、振り返ればヤツがいた。
おかわりいかがでしょうか
・・・・・・。
余っている。酒が大量に余っているのだ。出どころはどこだと瓶を探しても見つからない。準備されている酒の量が完全におかしい。東急ハンズ全フロアにでも配るつもりだろうか。別に飲まなくてはいけないという義務はないのだが、もったいなくて飲んでしまうボクの心理をうまく突いているのか。今度は両手を駆使して4杯も掴み取ってしまった。それがもうAなのかBなのかも分からずにウマいウマいと飲みながら、おそらくは味なんか分かってないだろうが、通常はガムシロやミルクなどが置いてあるカウンターのような場所へ一人で移動して立ち飲みを始めていた。ここからはカフェ内が良く見渡せる。皆それぞれ立ち飲みパーティーのように話し込んで楽しんでいる様子が伺えた。
深海クラスも実は、互いが顔を知らない組み合わせがたくさんあった。ネット上では仲の良い二人が席を並べて座っているが、お互いが他人だと思っている、という光景がおもしろかったが、こういう機会に知れる事になって良かったと思っている。
うんうんと頷きながら、自分が企画した訳でも何でもないイベントに満足感を得ていたら、ヨシザワさんに話しかけられ、「ま・さ・か酔っ払う人はいないよねと広報課内で話してましたが、酔っ払うとはさすがです」と言ってエレベーターの奥へと消えていった。いや、ヤツがですね・・・という言い訳を残すことは叶わなかった。
スケおじマネージャーもなんかニヤニヤしながら歩いてたので、飲まれたのですか?と聞くと、「いやぁ仕事中だからダメなんですよ、たったの2杯しか飲んでない」という素晴らしいお返事を聞いて、名残惜しくも薄暗くなったカフェを後にした。
まだこの酒は現時点では商品化に至っていない。本当に旨くてイイ酒だと感じたので、もし発売されることになったらボクは買って飲みたいところだが、いかんせん湧いたり噴いたりすることを祈るのみなので、希望を捨てずに待ち続けたいと思う。
第二弾 アナザーワールドに迫る!JAMSTEC注目の深海生物 3/14-19:00
おそらくは、四回の中で最も注目が集まる、というか、深海クラスが集まり、塩分濃度が濃くなるであろうイベント、JAMSTECのスター研究員の、必殺飼育人(命名者不明)こと、ゴエモンコシオリエビ芸人(上司命名)こと、深海クラスの担任(深海クラス命名)こと、和辻智郎さん(命名者不明)による深海生物ゴエモンコシオリエビについてのお話である。
和辻さんは世界でも唯一ゴエモンコシオリエビの長期飼育に成功したことで有名で、愛称の多さからその人気振りも伺える。そんな方が間近でその愛について語ってくれるのはとても貴重なことであり、深海ラボカフェの期間中に永延とゴエモンコシオリエビの生中継がされたり、深海クラスが事前にざわめいていたり、東急ハンズ渋谷店へ問い合わせが殺到したり、立ち見客の入場制限も検討されていたりと、たくさんの人が観覧に来ることが予想されていた。
この日の為にこんなモノまで作られた。作者は物販にも絡んでいる佐竹さん。この方はこういうのを作るのが得意で寝なくてもやる。この日の前日もかなり遅くまで取り組んでいたようだ。これはボクのために作ってくれた学生証で「あなたは代表に死ぬまでこき使われることをここに証明する」というモノでもある。当日それぞれ個々のデザインのモノが深海クラス各個人に配られ、裏番長とも呼べる砂女さん(仮名)が偶然空のネックストラップをたくさん持ち合わせていた事により、これを首からぶら下げて厨二を証明するネックストラップが完成することになる。
アトランティス国立中学校学生証(非売品) |
ここまでは深海クラス同士楽しくやってるだけなので微笑ましいのだが、これが恐ろしい方向へと発展した。なんと和辻さんとヨシザワさんの分までこの厨二ネックストラップを作るというのだ。佐竹さんもきっと寝不足のあまりテンションがおかしくなっていて無意識に作り上げてしまったのだと思うが、それにしても絶対に裏で誰かの指示があり、陰謀があったに違いない。画像なども出所不明のモノが使われており、とても表には出せないような代物であった。
暗くなると、鼻だけを頼りにより深海らしい方向へとどこからともなく集まってくる。それぞれが事前予約で思い思いの観覧の仕方を選び、最も楽しめる方法を模索していたことだろう。ボクらはまた椅子席を選んでいた。
今日はアヤちゃんが心なしか張り切っているように見える。お客さんが見込めるとの予想で気合を入れていたのだろう。するとその影に和辻さんが座られていた。ご挨拶をすると緊張感はありながらもすごく落ち着いてるように見えた。大きな手にはかわいいメンダコ・ラテ(後術)が入ったカップを持っていた。その姿にあまりにも違和感を感じたので、すかさず「和辻さんがメンダコとはまたおもしろいですね」と笑いながら言ってみた。すると「ゴエモンコシオリエビ・ラテは無いのかと聞いたら無いと言われたのでしょうがない・・・」と軽く落胆した様子を見せながら熱いラテをすすっていた。隣で聞いていたアヤちゃんは、はっ!やってしまった!と言わんばかりの表情を見せて、「ゴエモンコシオリエビ・ラテもご用意しておけば良かったです・・・!」と申し訳なさそうに目を×にした。やはり張り切っている。その後はひゃひゃひゃひゃひゃといった楽しい雰囲気になっていった。
ここで代表があることを切り出した。「顔出しパネルから和辻さんと一緒に顔を出そう!」企画である。この顔出しパネル(後術)は顔を出す穴が二つあるのだが、一人で出すのが恥ずかしい、虚しい、写真撮ってくれる人がいない、などいろいろな問題があって、深海クラスは出したい気持ちを抑えながら敬遠していた部分があった。事前に砂女さんから「和辻さんと二人なら顔出せるしぃ~ホワイトデーだしぃ~」という希望を聞いていたので、代表が代表で和辻さんにそのようなお願いをしてみた。すると「えぇ~~~?ヤァダなあ~~~~~」と照れ笑いしながらOKを頂くことが出来たので、イベント終わりに実行されることになった。
みなそれぞれのコックピットに乗り込んで、今か今かと和辻さんの動きを見守る。たくさんのお客さんが集まると予想されていたので、さぞ立ち見の人が多いことだろう、どんな人達が集まったのかな、外国人もいるだろうか、と席から辺りを見渡すと、
ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥ。 。 。 。
立ってる人がほぼいない。砂被り席は満席だが、大金星を挙げた時に遠くから座布団を投げる人がいない。逆にこれは混むと予想された為にあきらめた人が多いのではないか。もしくはゴエモンコシオリエビなんか画面で見られるからイイやとか、どうせダイオウグソクムシの話はないんでしょ?とか、何かがあったに違いない、そんなマイナーなハズはない・・・とか色々考えた挙句、一人で無駄に虚しくなっていた。
ところで話は既に始まっていた。最初は少し難しい話をしてて緊張気味だった和辻さんも、ゴエモンコシオリエビの話になってくると、だんだん楽しくなってきてしまったらしくノリノリで話し続けていた。実際にとてもおもしろいお話がいくつも聞けてとても楽しかったのだが、
完全非公開 ドンッ
JAMSTECによる指令なので、残念ながら内容に関しては何もお伝えすることができないのだが、質問タイムスタート時、手の上がらない時間帯に和辻さんから「深海マザーさん、何かありませんか?」と名指しされて隣に座っている代表に助けを求めたが、シカトされたということだけはお伝えすることができる。”代表” とは何だろうか、今一度良く考えてみる事にしよう。
ここでついにアレを渡す時がきた。厨二ネックストラップである。渡す役割を果たすのは少し遅れてやって来た佐竹さんだ。ビクついている佐竹さんの様子を察知した代表はフォローするどころか、どんどんプレッシャーを掛けていき、オラオラァと急かしていた。なんて酷い虐めなのだろうか・・・。耐え兼ねた佐竹さんはついに切り出した。あ、あの・・・もにょもにょ・・・これ作ったので、あの・・・と和辻さんに手渡した。ちなみに深海クラスの担任の先生という設定である。恐る恐る様子を伺うと喜んで頂けたみたいでみんな安堵の表情を浮かべていた。本当に中学二年生のようであり、素晴らしい事だと思った。
危険な事をしようとしていたのは佐竹さんだけではなかった。この世には恐ろしい壁紙が存在するもので、砂女さんが独自に開発したとされる、スケーリーフット&和辻さん&●●さんを融合させたアートを和辻さんご本人に見せたいというのだ。ボクはそれがどんなモノだか既に知っていたので、さすがにヤバイと思ったが、止める事はしなかった。なぜならば、ボクも見て欲しかったから。どんな画像なのかはここで紹介する事ができないが、「砂女ですっ!」といってあっさりそれを公開し、「ボクには肖像権がないのかぁ~!!」というやりとりの結果として、一つ確実なのは和辻さんが喜ばれていたことである。
厨二ネックストラップは深海クラス各個人へ手渡され、最後のヨシザワさんへ渡す時が来た。ヨシザワさんは深海クラス副担任という設定だ。しかし佐竹さんの挙動がおかしい。その後ろで代表がニヤニヤ楽しそうにしているではないか。一体何をしているんだ・・・&#&%$¥@%#&@&#&%$¥@%#&・・・・・・。あまりの凄まじいやり取りだったため、公開は控えたいと思う。しかしながらヨシザワさんからは喜び、楽しみの表情が伺えた。
最後に、無理やりお願いするという形になってしまったかもしれないが、とてもサービス精神旺盛な和辻さんによるファンサービス、「チューブワーム顔出しパネルで記念撮影大会」が開催された。和辻さんは顔をはめっ放しで、隣だけが回転よくすり替わっていく。背の高い和辻さんはどういうわけか低い方を陣取られたため、背の低い深海系女子たちは首を伸ばしたりアゴを上げてみたりと、必死に背伸びをしながら撮影に挑むというパネル裏側での盛り上がりで幕を下ろした。
(非公開や伏字ばかりで申し訳ないです)
顔出しパネル記念撮影 (左:和辻さん 右:代表) |
ちょっと チムニーブレイク
言うまでもないが、深海ラボカフェとは、カフェ、喫茶店であり、飲食ができる空間である。故に、当然ながら深海的なメニューが存在する。フードではカレー、ドリンクではカフェ・ラテで表現されることになった。
まずはカレーだが海底の熱水噴出孔を表現した「深海カレー(熱水噴出孔ジオラマカレー)」、通称「チムカレー」である(誰も呼んでない)。これはライスをチムニーに見立てて高く盛り、深海らしく黒カレーを採用。オハラエビかリミカリスだと思うが、エビの群集はサクラエビで、ユノハナガニだとは思うが、カニの群集をアカイシガニで代用し、カニに関しては基本3匹のところ、トッピングシステムを採用して最大20カニまで自分で養殖し、そして食べるという、この手のフードにとってはかなりのチャレンジだったのではないだろうか。さらに、地味すぎてあまりスポットは当たらなかったが、粉チーズがパラパラと掛かっている。これはなんと熱水噴出孔にびっしりと生息するバクテリアマットを表現したモノなのだ!ここまでやれば十分お金を払うに値するメニューだと個人的には思った。
ちなみにこのカレーの考案者はアヤちゃんであり、短期間で相当勉強されたのだなあと、何の専門家でもないくせに先生ぶったボクはとても関心したのだった。
以下はそのチムカレーの写真だが、少しでも宣伝をと思ってバリエーション作りに手を尽くしたのは良かったとは思うが、肝心の素の姿の写真を撮っていないことに気付き、今とても後悔している。
ライス大盛り+20カニ逃げ出しチムカレー |
おもむろにチムニーをなぎ倒すとエビに呪われるカレー |
チムチムニーカレー |
続いてカフェ・ラテはどんなモノかというと、ホットのラテにラテアートが仕込まれている。メンダコバージョンとダイオウイカバージョンがあり、短く言えば軟体ラテである。これは切り絵アーティストのkilligraph(キリグラフ)さんによる切り絵で作られた型にココアパウダーを振るという手法のモノだ。
いつもカフェ内が暑かったので、ボクはアイス・ラテばかり頼んでいたが、これに関しても宣伝の手を緩めたくなかった。
しんかい6500スラープガンでダイオウイカを捕獲ラテ (口の中を火傷) |
メンダコがふわりと浮いた後、逆さまに落下ラテ |
きっとたくさんの人が真似してくれたことだろう、と思い込めれば幸いです。
第三弾 博士の深海おりがみ教室 3/28-19:00
おりがみ、おりがみねぇ、きっと将来科学者になりたい少年や、保母さんになりたい少女がたくさん来て、先生に教わりながら純粋に素直に一生懸命折り続けるといったほんわかした場なのだろう。そう信じきっていたので、事前予約はしなかった。ちなみにボクらはおりがみを折った経験があまりない。
ビルの影が薄くなってくると、それを時計代わりにビルを這い上がる。途中で落下した人もいるかもしれないが、ボクらは開始時間よりも少し遅れて登頂した。既にお客さんたちは真剣な眼差しでおりがみを折っていた。子供たちは楽しくやってるかな?と席を見渡すと、
大人げない
大人ばかりが汗を噴き拭きしんかい6500のおりがみを真顔で折り続けてるではないか。ちょうど完成してドヤ顔で作品を自分の前に置いて自己満足に浸ったり、写真を撮ったりしている人もいた。見ると結構簡単そうな作りだったので、モノが何であれ作ることはイイよね、と思いながら微笑ましく遠くから眺めていた。
講師はJAMSTEC研究員の松田景吾さんと、渡部裕美さんだった。当然の如くヨシザワさんも来られていたのでご挨拶をすると、「席も空いてますし、おりがみも余ってますので、次のスケーリーフットからご一緒に折られてください」と端っこの席へ案内してくれた。しかし前回差し上げた厨二ネックストラップを下げていない。ボクらは今日も下げてますよと前へ差し出すと、ハッとして「忘れてしまいました・・・」と申し訳なさそうに苦笑いした。いえ、イイんですイイんです。
席の隣には、物販でも絡んでいる有麒堂さんと、おや?ピカゴロドンさん(仮名)もおられるではないか。彼女は水族館が大好きで、全国水族館巡りゃーで有名である。神奈川の水族館に来たついでもあって、遠方からはるばるおりがみを折りに来られたようだ。
ヨシザワさんからスケーリーフットのおりがみと折り方手順書が渡された。「深海マザーさんは(非公式なので)しんかい6500の方はいりませんよね?キラン」と不要とも思えるお言葉を頂きつつも、両方をもらって折り始めることになったのだが、折り方手順書にザッと目を通した瞬間、ルービックキューブの達人が10秒ぐらいでカシャカシャカシャンッと完成させるように頭の中で計算が成され、あることを悟った。
このおりがみ、おりがみじゃない
なんと48手順もある。この一枚の紙を48回も折らないとスケーリーフットには成り得ない。山折りと谷折りが良く分からない。さっきのしんかい6500のヤツも見た感じ簡単そうな作りだったけどこんなに難しいモノだったのか、とそっちの手順書も見てみると、しんかい6500リアルバージョンとある。先に皆が折っていたのは簡易バージョンだったらしい。さっき見たドヤ顔をしてた人の心中や如何に。
しかし折り始めると意外とサクサク折れていくものだ。あぁ、結構イケるかも・・・と調子に乗って折るスピードも上げていく。しかし折れば折るほど紙は小さくなっていき、複雑さを増していく。ついには折り方が全く分からなくなってしまい煮詰まってしまった。松田さんが手順通りに皆に説明しているが、ボクらには背を向ける位置におられるのでよく見えない。するとピカゴロドンさんのスケーリーフットが目に留まった。かなり進んでいるではないか。これは教えてもらうに限る。教えてもらおう。すいません・・・と近づくと有麒堂さんもかなりデキる!二人ともデキている!ボクら二人はデキない!デキていない!ということで教えてもらっては席に戻り、また教えてもらっては席に戻る、を5回ぐらい繰り返しただろうか。しかし終盤になってくると本気でヤバくなってきた。紙が小さくなって来たので、折るというよりも上から親指で押しつぶすといった作業が出てきた。この時点で代表は途中で放り投げて課題を放棄。ボクが二つ同時に折るはめになったが、なんとか完成まで漕ぎ着くことが出来き、結局は同じような完成度のスケーリーフットが2匹生まれた。
おりがみスケーリーフット(貝の巻き部分がヒドイ) 左:代表 右:ボク |
ありがとう、ピカゴロドンさん!おかげで自分に勝つことができました!と達成感に浸っていたら、ヨシザワさんが出来栄えチェックに来られて、「ほう、代表さんの方は良く出来てますねー、深海マザーさんはやっぱり紙だとダメなのでしょうかニヤリキラン」と吐かれていった。代表もさぞニヤリとしていたのだろうが、敢えて顔は見なかったニヤリ。
しんかい6500リアルバージョンおりがみをお土産に持ち帰ったが、この日の消耗っぷりを思い出すと、未だ折る気にはなれていない。
尚、アヤちゃんとスケおじマネージャーは急な人事異動があり、これが最後のイベントとなってしまった。そして終焉を向かえる事なく深海ラボカフェを後にした。最初からお世話になってきたということもあり、ボクら以上にヨシザワさんがとても残念な気持ちを抱えながら過ごしたことだろう。
第四弾 深海水圧大実験!! 4/4-19:00
圧力を加えていくとカップラーメンの容器が縮んでいく、といった水圧実験は映像などでは何度も見ていたので、ボクにとっては特別そそられる企画ではなかったのだが、深海ラボカフェ最後のイベントということもあって、事前予約をせずに見学に行ってみた。
闇深まれば、水圧もまた高し、とも限らないが、高水圧と聞くと皆反応し、圧力を感じるべくこの地へやってくる。Welcome to 極限環境。Welcome to 最後の夜。ウェルカムトゥシブヤジャパン!
開始10分前だというのに、予約席には有麒堂さんが一人でポツンと座ってスマホをイジっている。そんなに人気がないのかこの企画は・・・と心配しながらとりあえず隣へ座ってみた。
講師はJAMSTEC技術研究副主幹の宮崎剛さん・・・・・・と聞いていたのだが、ヨシザワさんが作業着を着て張り切って準備をしてるではないか。確かに宮崎さんも講師だが、ヨシザワさんも講師の一人だという。その準備中の事だった。「今日は厨二ストラップを持ってきてちゃんと首から下げてますよ」と言って見せてくれた。先日の件をかなり気にされていたのだろうと思った。その瞬間、ハッとして自分の胸元を触ってみた。
ない ない ない ない ない
忘れた・・・。今日はボクが忘れてしまっていた。すかさず代表がコイツ忘れました!と告げ口をすると、「・・・・・・」。これは沈黙なんかではない。ましてやメガネがキランッとしたわけでもない。なんと今まで見たこともない恐ろしい目をしてこちらを睨んでいるのだ。ゾクッ・・・!すると同時に隣の有麒堂さんが僅かに後ろへ仰け反ったのが分かった。ボクのゾクッ・・・!と有麒堂さんのビクッ・・・!が同じタイミングで起きていた。数秒で笑いの面に表情が切り替わったので安心したが、冗談とも本気とも取れないような空気が流れたのは間違いない。未だに冗談じゃなかったという可能性は否定できていない。
やっとお客さんたちがバラバラと到着し始めた。一般の人からもイベント内容が分かりやすいのか、たまたま立ち寄ったのでついでに見ていってみようといった立ち見の人も多そうな印象だった。するとヨシザワさんと代表がヒソヒソと何かを話しているではないか。何だろうと思って聞くと、水圧をかける装置をお客さんが動かすという体験型にしないかという代表からの提案だった。それは元々そういう流れで進めると決まっていたらしいが、ヒソヒソとしていたのは「やりたい人!と言いますので真っ先に手を挙げてください、指しますので」という不正極まりないことだった。それに同意してサインをした代表は戻ってきて何食わぬ顔で着席した。
簡単な説明から始まり、まずは定番であるカップメン「ブタメン」の空カップを水圧で潰すことになった。「では、やってみたい人!」ハイッ!とかなりのスピードで皆一斉に手を挙げたのだが、やはり音速を超えたのは代表だった。当たり前である。不正である。子供の目の前である。
しかし代表は見くびっていたようだ。ヨシザワさんはその不正すら異次元へ導くかのように、「はい、代表さんが一番早かったです。大人げないですね」。これにはボクもぶっ!となり、あの「ろくでなしブルース」によく登場する舌を出して「え゛ぇ゛ぇ゛」みたいなポーズを取りたくなったが、代表は「大人げなくてすいませんフンッ」と前へ出て行った。
以下は、不正行為を働いた代表が水圧実験中に天誅が下るシーンである。
ヨシザワさん「掛かっている水圧によって水深が分かるようになってるんですよ」 代表「あ、そうなんですね~」 |
ヨシザワさん「では初めてください」 代表「はい、深度計ヨシ」 |
ヨシザワさん「・・・・・・フッ。」 代表「なんだこれ楽勝すぎる・・・キコキコ・・・キコキコ・・・」 |
ヨシザワさん「・・・・・・。」 代表「ムッ・・・重くなってきたわよ・・・」 |
ヨシザワさん「ぷぷ・・・」 代表「クッ・・・!なん・・・じゃ・・・コレ・・・!!!」 |
ヨシザワさん「wwwwwwwwww」 代表「ふんぬーーーっ!!!プルプルプルプル・・・」 |
この状態で水深500メートル付近だそうだ。ここからは男子でもなかなかレバーが動かせないらしく、宮崎さんが水深1000メートルまで押し下げて、任務完了である。水圧をかける対象を変えながらあと数回これが続くのだが、やはりやってみたいと思っている人は多かった。ボクも見慣れていたとはいえ、間近で見たのは初めてで、実際に目前で何かが苦しみながら潰れていく様を見るのは想像以上におもしろかった。
深海クラスの大人げなさも凄まじいモノがあり、ロック五十四さんにいたっては、「他にやりた・・・」ぐらいでハイッ!と言ってしまい、「フライングは失格です…キラ」と言われ、今度は「他にやりたい人!」の後にハイッ!と言ったが「出しゃばると嫌われるんですよ…ギランッ!」とされて、「今メガネが光った・・・」とこちらに救助を求められたが、救出できるはずもなく、水深1000メートルを遥かに超す深度まで沈降していったが、少年が潰れた物をたくさん欲しがったため「キミ貪欲だねぇ」と人類皆平等的なことも言われたのもあって、その毒は愛すべきモノだという空気に変わっていったような気がした。それと、ピンポン玉が水深20メートルで破裂するという並外れた弱々しさから、ピンポン玉に対する愛が変わったような気がした。
熱水噴出孔跡地4月6日
最初は長く感じ、終わる頃には短かったと感じる最終日を迎えた。JAMSTECが展示物を撤収すると聞いたので、最後にお礼が言いたくて7階へ上がった。閉店するまでコーヒーを片手に物思いにふけながら少しの間ゆっくりとした時間を過ごした。やはり寂しいものだ。短期納品などで苦しい思いを何度もした分、逆にそれがとても名残惜しく感じる。
広報課の方たちも皆思い思いにその時を待っているように見えた。
ヨシザワさん、大変お世話になり、またお声を掛けて頂きありがとうございました、と伝えると、「今からここは、熱水が枯れて構造物だけが取り残されたデッドチムニーではなく、チムニーごと爆発して木っ端微塵に吹き飛んで更地になった熱水噴出孔跡地です」と言われた。ボクは、きれいさっぱりと片付けて次の新たな極限へと進むためには切り替えが必要だという解釈をした時、ヨシザワさんのほほを伝って落ちる一粒のレンズのカケラがキラリと光ったような気がした。これはあくまで印象であり、実際に泣かれたわけではない。だが、本当にそう見えたのだった。
彼は言った。
深海クラスが集まり楽しめる空間が必要だ
そのためには ”エサ” が必要だ
内容は特殊な物でなくていい
ただ、一箇所でいい
開放的な場所さえあればいい
-吉澤理
終わりに、東急ハンズ渋谷店で開催された深海ラボカフェは、取材150件以上、深海カレー1500皿突破、物販も記録的な売り上げを見せ、お客様の満足度も高かったと聞いています。
そのようなイベントに関わらせて頂きました事を深くお礼申し上げます。
JAMSTECの皆様、東急ハンズ渋谷店7階HINT7の皆様、物販でご協力頂きました有麒堂様、佐竹様、その他の物販ご担当者様、そして深海クラス、大勢のお客様、感謝致します。
有り難う御座いました。