目が覚めると、感覚がなかった。
見知らぬ封筒がテーブルの上に置いてある。中を見ると現金が入っている。これはどういったお金なのかと問うと、物販の売上だという。誰が売って誰が何をどんな顔で買っていったのだろうか。液晶画面を見ると「楽しかった~」とか「まさにドリーム!」といった活字が流れているのを見かけた。しかしすべてがまやかしに見える。会場に来られた人たちは本当に楽しめたのだろうか。出来事だけははっきりと覚えているのに、それに乗っかったモノがどうしても表示されない。本当に夢だったのではなかろうか。突出して輝いているのは、一人の地球人の活き活きとした笑顔だけであった。
ボクらはある事のために、とある古びた科学館に来ていた。そこだけ年月が経つのを嫌うかのような雰囲気が漂っている。奥へ向かへば向かうほどそれは濃くなってゆき、辿り着いた先には突然の宇宙空間が拡がっていた。いくつかの星が流れては消えると、今まで微動だにしなかった太陽が、その時を待っていたかのように小さくボッとフレアを放ち、それを偶然浴びてしまって火傷を負った小惑星の叫びから、それは生まれたんだ。
深海ドリーム第一夢
高井研 vs 深海マザー「マジでキミら何なん?」「何がでございましょう」突然の深海論争勃発!
高井研さんは、深海ファンから絶大な人気を誇り、深海にとどまらず、地球、宇宙にまで夢を馳せる研究者として有名である。対する深海マザー(代表:山田里紗、創作:宇山亮、店主:生ワカメン)は深海でも底のほ~うをテーマにしながら家具家具を創り続ける一民間企業で特別コレといったアレではない。一見深海つながりに見えるかもしれないが、比較する事自体が無意味な二組だ、というような認知のされ方だと思っている。それにしても何がどうなったらこの二組が同じ夢の中で論争とかいう話になるのか、と思われた方も多いと思う。
ボクらは初めて「深海ドリーム」というイベントを企画する事になった。もちろんタイトルも自分たちで決めたので、内心では「これほどまでに素晴らしいタイトルは他に存在するわけがない」などと今でも思い込んでいるのだが、どう考えたってしゃべる事に長けた高井さんに論争で勝てるわけがない。
キミら何なん?
マジでキミら何なん?
と迫られたら
いや・・・
え・・・
のようになる事は目に見えている。
しかしながら「とりあえずVSって付けときゃイイんじゃね?」みたいな軽いノリで付けた訳でもない。これはきっと太陽フレアを浴びた時に、理屈では説明できない何かが起こったに違いなかった。
これまでに数回程度だが、高井さんのご講演を拝聴した事があり、どのように講演されるのかはおおまかには知っていて、しかしどれをとっても高井さんは何かしらのオトナの事情を気にしながら話されているように見えて、本当はもっと凄まじい破壊力をお持ちなのではないだろうか、もっともっとファンと身近に接したいのではないだろうか、とか思いながら少しムズムズした気持ちを家までテイクアウトしていたのであった。なので、せっかく深海マザー主催という機会を得て高井さんをお迎えするからには、可能な限り炸裂できるような空間だけはご用意したいという夢を見ていたが、現実はそんなに夢っぽくはなかった。
講演を依頼するには、高井さんの研究に沿った内容でなくてはならなかった。しかし普通に依頼しては今までの講演と何も変わらなくなってしまう。何度も挑戦し続けてその想いが届いたのか、どこからともなく、「深海アトランティス連邦大統領首席補佐官ケン・タッカイ」という存在がふわりと現れ、こんな言葉が降りてきたような気がした。
もう諦めえや
キミらも出演せえ
※ 実際には何も言われてません(これはテイではありません)
イヤだ。イヤに決まってる。それだけは・・・と、どんな手を使ってでも逃げようとしていた部分を見透かされていたのだろうか、落ち葉の下に巧妙に隠されていたハンモックみたいなネットの上に足を踏み入れて、バシュッと木の枝に吊し上げられた挙句に夜が更けて寝るしかなくなってしまったかのように、あっさりとそれはそうなった。しかしボクらがそれを諦めた事によって夜が明けたのか、「高井研」としてはそのような場には出られないが、高井研の魂を受け継ぐスーパーヒーロー「ケン・タッカイ」が講演という「テイ」を装って登場してくれることになり、追いつめられていた心を救ってくれたのだった。
それにしてもこの「テイ」という言葉、めちゃくちゃ便利で使い易いんです。
超講師招致成功
超素人主催者出演決定
出演者ヨシ。あと欠かせないのは物販と音響だが、深海マザーの構成員だけじゃ人手が足りない。生ワカメンには彼にしかできない重要な任務がある。予算的にも人に頼む事は難しいだろうと吐きそうになりながら、いつもの依存症によるTwitterシュコシュコサーフィンをしていると、なにこれ、熱水チムニー兜?被れないしどう使うのか全く分からない何の役にも立たなそうなモノが目に飛び込んできた。素晴らしい。これはぜひ会場で展示販売して欲しい。作者は老舗面蛸陶芸家の有麒堂さんだった。作家でありながらも「むじんくん」のような超スピードで現金の受け渡しを可能にする能力を持ち合わせているという事を、ボクはどこかでチラ見して知っていた。すぐに代表が組員を引き連れて殴り込みをかけると、なんとご夫婦揃って協力してくれるというのだ。
超速物販士補完成功
マイクとかスピーカーとかよく分からない分野だし、ああ、なぜボクは音響設備が整った会場を選ばなかったのかと激しく後悔しながら吐きそうになっていると、ピロンッ(やりまっせ!)と突然マイタブレットが鳴いた。何をやりまっせ!?開いてみると、いつもお世話になっている撮影の仕事をされているササキのおじさまがやりまっせ!とピコピコしている。この方は特に深海生物や深海系の人が対象になると、レンズを覗く顔の目や口元が怪しく変化する事を、ボクはどこかでチラ見して知っていた。要するに撮るのが大好きなのだ。しかも音響設備の用意と撮影までしてくれるというのだ。
超絶収録陣補完成功
整った・・・!
スタッフ皆整いました・・・!
映画「アルマゲドン」や「ザ・コア」などで一つの事を成すために、各分野スペシャリストが結集されていく場面を観るような快感に満たされながら、自ら作った映画を観終わった気分で感動していたが、ボクらは大きくうねる大海原に浮かぶ漁船に乗って「釣りバカ日誌」のような映画に出演していたという事に気が付いた。
公式生放送させてください
イベントが面白そうなので様子をインターネットで生中継させてもらえないかという突然の依頼があった。この頃はまだ席の埋まり具合が半数にも満ちておらず、もしそのまま開催されれば、講演されるケン・タッカイの熱弁が、ステージから客席をスルーして後方の壁までダイレクトにぶち当たった末に儚く散っていく夢、という光景が容易に想像できてしまい、ヤバイ、ムナシイ、それだけは避けなければと思っていたので、主催の立場のみからしたら宣伝になり得る事は全て欲しかった。
しかし、既に今イベントは密室(生中継なし)を前提としていて、お客様にはそのように告げてある。それにケン・タッカイは映像的には流せない表現を多用される事が予想されていたので、生中継したとしても結局その面白さを伝える事ができないだろうと思ってお断りしようと思っていた。
のに、それなのに、心が大きく揺れているではないか。なぜだ。何も迷う事はないはずだ。なぜ揺れているのかとふと足元を見ると、漁船だと思って乗っていた物が実は巨大な天秤だったのだ。しかもたぶん真ん中の方であっちへふらり、こっちへふら~りと身を委ねているだけで、もう少しのところであっちへ行ってしまった挙句に吐いてしまっただろう。
天秤を一気に傾けてくれたのはササキのおじさまだった。撮影の立場からすると、時間的にもスペース的にもセッティングは不可能、それは別のイベントでも出来ることであり、深海マザー発のイベントに期待していると言われた。ボクがどっちかにふらつくには十分過ぎる一言であった。
そして、賭ける事ができた。
吐いたけど。
・・・・・・
薄暗くなる頃を見計らって集まってくるドリーマーたちの影がちらほらと見え始めた。皆それぞれどんな夢を見に来たのか、時間が来ると木々がうにょ~んと曲がって道を作り、そんなことはどうでもイイから入りなさいよ、と夢への扉を開けてくれたように見えた。
第一部:学術講演会
海はなぜ深くなるのか?それを知るとなぜ生命は深海熱水で生まれたかが理解できるのだ!
全部新作だよ~とケン・タッカイがステージに上がったのを見て、ボクらも出演席へと腰を下ろした。そこから辺りを見渡すと、たくさん用意したカラフルな椅子達がお客さん達を一人残らず座らせてくれていた。お馴染みのフェイスや、どこかで見たようなフェイスもそこにはたくさんあり、一応危惧していたような事はなさそうだと安心していきなり水を飲んだ。
喉がカラッカラなのである。
ボクは基本的に鼻呼吸なのに、普段から渇き気味で良く水を飲む。それに加えて前々日ぐらいから原因不明の急激な口内砂漠化が進行していたので、当日は一升瓶に水を入れて持っていこうと考えていたのだが、忘れた・・・。目の前に置いてあるペットボトルに入った、たったの500mlの水。不安だ。不安過ぎてさらに砂漠化が進んでいるような気がする。長丁場になる事を予想して時間は多めにとってあるのはイイが、飲み過ぎて途中で水が足りなくなって、何かしゃべった時にカッとかなったらどうしよう(代表からニチャニチャしてんじゃねーよと言われる)。
ドライ or モイスチャー
前日まで吐きそうになりながら極限状態に陥っていたMC代表だったが、本番で隣に座って聞いているとデキる、デキている!と思ったのに、即座にケン・タッカイから「仕切りワルっ!」とdisられて夢は始まった。
ボクの自己紹介の番になった。ケン・タッカイは講師、代表はMCという役割が決まっているのだが、いくら考えても思いつかなかった。一体何役でここにいるのだろうか。それに人前でしゃべるなんて初めてに近かったはずだが、前日見た緊張予報が大きく外れ、ドキドキバクバクといった心臓の音がまるで聞こえず、むしろ心地よいぐらい落ち着いているのに、
声が出ない
ドライなわけではない。マイクに慣れていないせいで、出ているのかどうかが分からない。自分の声が聞き取れていないのか。それにしてもなぜ緊張していないのか。それがまずおかしい。落ち着きすぎている。おかしい。もっと緊張しないとダメだ。それになぜか近距離でケン・タッカイがニコニコしている。なんなんだこの状況は。それにお客さんの顔が見えない。たくさんの姿形は見えているのに一人一人の顔に照準が合わない。見たいのに。まさかそのせいで緊張していないのか。ああ緊張しておけば良かった。なぜあの時緊張しておかなかったのか。相変わらずケン・タッカイはニコニコしている。
というようなボクの始まりだった。
ケン・タッカイの自己紹介になると、「なんでワシが」「なんだかワカらんが」「なんなん?」と言いながらも、何がどうなってこうなったのかという事を楽しそうにしゃべってくれた。
そして「テイ」とされている講演が始まると、熱水噴出孔の研究はもう古く、ケン・タッカイの興味は「超深海」に突入したという事が宣言された。10000メートルを超す海溝には未知の生態系が拡がっていて、ケン・タッカイが目指す土星の衛星エンケラドゥスなどに行く前の良い暇つぶしというテイになるそうだ。そこで「しんかい12000」の話が浮上するのである。
おもしろい・・・・・・!
想定してた通り、映像で公開されるとなった場合、「ピーーー」や「バキュンバキュンッ」が必要になるであろう発言や、モザイク(リアルの段階で既にモザイクが入っていたモノもアリ)が必要になるであろうスライドが次から次へと流れていき、そこにはテンポ良くそれに応じたしゃべりが乗せられていく。時々自らのネタでツボに入って爆笑するシーンや、そのネタを知っていそうなお客さんに「ワカル?ワカルでしょ?」と同意を求めるような巻き込みシーンもあったりと、既にめちゃくちゃ楽しそうにしゃべられていて、ボクも代表も、その意味が分かろうが分からまいがほぼ笑いっぱなしだった。ケン・タッカイの為に用意した空間で、ケン・タッカイが楽しそうに笑いながらしゃべっている。主催者としてこれほど安堵を覚える事は他にない。
しかし、なぜかお客さんが笑っているのかどうかが分からない。ササキのおじさまによる複数台のカメラがボクらを睨んでいるはずだが、おじさまとカメラはどこだ。物販スペースにいるはずの有麒堂夫妻はどこだ。ワカメンは今一体どこで何を被っているのか。なんだかこのステージ上で自分たちだけしか笑ってないような、不思議な感覚に陥って今度はものすごく不安になってきた。喉がカラッとしている。
第二部:公開討論
しんかい12000ってどうよ?マニア目線と一般国民目線で語ってみよう
再び「仕切りワルっ!」とdisられた代表の仕切りだったが、この部では世界最深部まで潜れる有人潜水艇が本当に必要なのかどうかをテーマにお客さんたちと語り合う時間だ。少し長めの質疑応答タイムでケン・タッカイとお客さんの距離が縮まればと考えていた。
手が挙がらない
ふふふ、そう思っていたよ。最初って手を挙げにくいんだよね、だからその空気を破壊し、且つ、後の人が挙手しやすい環境作りが大切だから、少し砕けた質問をするために徹夜で作ったこのスライドを駆使してボクがまず手を挙げるのさ・・・・・・
というハズだった・・・なのに・・・ケン・タッカイのお話のある部分が想定外だったために・・・このスライドはダメだ・・・使えん・・・これではウロコをすべて抜かれたスケーリーフット、胸毛をすべて刈られたゴエモンコシオリエビに等しい・・・代表はこの件を知っているハズだが、助けてくれるわけがないな・・・一人総特攻して散るしかない・・・と判断し、自ら手を挙げざるを得ない状況に追い込んだ上で、思いっきり手を挙げて質問したのに
日本語でしゃべってください
キタ。
ケン・タッカイの地球人離れした洞察力によってボクが置かれた状況が瞬時に見抜かれたのか。日本語以外しゃべれないという事がバレるのは仕方のない事だが、日本語で質問したのに日本語でしゃべれという事は、見抜かれたに違いない・・・!
という闘いがあって負けたんです。
しかし、そこからはお客さんからいろんな質問が飛び交い始めたので、主催者としては特攻が成功したのである。死んだけど。
部のタイトル通り討論らしくなってきた中で、ボクの涙の泉に映ったのは、「一つのお高い有人潜水艇と、たくさんのお求めやすい無人探査機だったらどちらが必要か」だった。ここでケン・タッカイがサイエンティストとホモ・サピエンスに分裂する。科学としては無人の方が遥かに進む。しかし、その結果人間としての大切なモノを失う、といった「効率重視の社会」についての問題だった。
これでも深海マザーは一応社会の一部として存在している。しかし、それを維持するために効率を求めつつあり、現に最初は手作り品のみを販売していたのに、最近では業者に発注するようになってきた。このまま進んではいけないと思いつつも現実的にそうせざるを得なくなってきている。一番気持ち悪いのは「自分で創った」という実感がないことだ。久しく創っていないような気がする。まだそんな風に感じている内は良いが、このような状態が長く続けばきっとその部分が麻痺してしまって腐っていってしまうのではないだろうか。
単純に、深海い~き~た~い~とダダをこねるような話ではないのだ(って書いてたら、同じことを大金持ちのお嬢さんが言ったらイケそうな気がしてきた・・・)。
とにかく、ケン・タッカイはそう、国民に問いかけていたのだった。
全然関係ない話だが、客席におられた深海ビブリオバトルの中の人さんが、ケン・タッカイに「あの方はしゃべるとダメなんですよ」とdisられた際に、ひょんな事から代表も一緒にdisってしまうという現象が発生したのだが、ほんの数秒の間だけの二人のリズムの良さに大きな可能性を感じてしまったのだった・・・。
第三部:高井研vs深海マザー
いびつな絆 深海マザー=自称家具屋の真実
これまでケン・タッカイを密着していた取材陣が退却していった。ついにテイが剥がれ落ちる・・・真の深海ドリームが始まろうとしていた。
まだまだ距離がある!と、ケン・タッカイは客席へ向けて放った。もっともっとぶっちゃけて進めたいとの事で、海水水槽の水替えをするようなイメージなのか、突然のMC代表退場、客席から突然の新MCマッシー就任という展開になった。マッシーさんはいろいろな番組で勤められているプロのMCであり、たまたま客席に来られていたのをケン・タッカイに捕獲されてしまったのだ。しかもタダで・・・。
しかし主催者としては万々歳で、特に代表は「あまりの仕切りのワルさにヘキエキしてます」とかdisられたりもしてたので、この突然の交代は大歓迎だったのではないだろうか。とにかくMCがプロに変わっただけでこんなにも空気が変わるのか、と実感できるような変わり様があった。
だが、酔っ払っている。
それはそうだ、このイベントはアルコール類も持ち込みOK、食べ物持ち込みOKの基本的に何でもOKが前提である。突然前へ呼ばれるなんて思いもよらなかったマッシーさんは酔っ払っていて当たり前だが、おもむろに持ち込んでいた缶チューハイやおはぎなどを前に置いたとたんにステージを支配していた。ただ気になったのはテンションが良く分からなかった事だけだった。
こうなると進行のスピードが上がり、お客さんが手を挙げると「キミ、所属は?」と差し方も鋭くなる。そうすると答える側も「あとらんてぃすちゅうがっこう2ねんのさぁんどまぁんです」のようになり、「なんでとんがったおくつをはいてないのぉ?」という質問がケン・タッカイに投げかけられるというまさに深海らしい流れになるのである。
深海マザーについて妄想した小説がある、とケン・タッカイは切り出した。誰に対してでもそれがあり、「これがクリエイティブです!」と自負するケン・タッカイによれば、どうも深海マザーは怪しい、なんか変だと感じるという。なんかねーなんかねーと笑みを浮かべたり、妄想ですから!と何度も繰り返すような語り口が印象に残っているが、おそらくはこの小説を語りたいがために色々なテイを装ってやって来てくれたのだということだけは分かった。
実は「いびつな絆」と聞いて、ボクは深海マザーとアノ絆の事でdisられるのだとずっと思い込んでいたのだが、いざスライドに「いびつな絆 深海マザー=自称家具屋の真実」と表示されると、
ゴクリ・・・・・・!!!
こ、これは・・・!
マジだ・・・!
マジでやってきた・・・!
急激に空気が張りつめていった。ボクも代表もソレらに対して口を開く事ができないでいる。ケン・タッカイがしゃべりながらもこちらの様子を伺いながら反応を見ているように感じる。空気が読めたのか読めなかったのか、マッシーさんがその真実について突っ込んで、キタ・・・・・・!これはもう何か言わなければマズイ・・・!と思った寸でのところでケン・タッカイが妄想でエエやないか!と断ち切った。本当に息が詰まるほどの攻防だった。これがタイトルにある「VS」の神髄だと思った。
ここでケン・タッカイが「いや実際そう思わへん!?」とお客さんの一人に問いかけると、うんうん、と頷いている。それに代表は興味を持ったのか、そう思ってる方は手を挙げてくださーいと言うと、バババッとたくさんの手が挙がったが、いやこれは妄想ですから!という事でやっと終止符が打たれた。
時の流れを捉え切れずにいる中で、突如ボクはある異変に気が付いた。さっきまでそこに鎮座していたケン・タッカイがいないのである。
あれ、なんか違う人がいる・・・・・・。
何が起きたのかは分からない
確かにボクはその”何か”を捉えたんだ
高井研のテイとして現れたケン・タッカイ
それすらテイだったかのように思えるような
ミスター・ジャムステックと名乗る地球人が
そこにはいたのだ
楽しかった~と散っていくドリーマーたちをすべて見送った後に、イベントの様子が収録された映像データをササキのおじさまから闇取引で入手した。自分たちの情けない姿が映ったそれを視聴したボクと代表が同時に首を吊ろうとした事は言うまでもないが、夢の中にいたお客さんたちが楽しんでいる様子がハッキリと映しだされた画面を観て、ああ、終わったんだと二人で言った。マイカレンダーに赤ペンで「バトル高井研&」と汚い字で書いて楽しみにしていたウチのジュンコも、役目を終えてゆったりとした眠りにつき、夢の中へと戻っていったようだった。
ケン・タッカイ |
深海マザー代表・山田里紗 |
おわりに
深海ドリームという形で初めて主催させて頂きましたが、みなさまのご協力が無ければ実現はとうてい無理でした。特に当日の準備時間と撤収時間が短かった事、これは主催者の至らぬ部分だったと認識しております。私達の知らない部分でもご迷惑をお掛けしてしまった事もあるかと思っております。今回は本当に良い体験、経験をさせて頂き、そしてなにより私達の中で楽しかったという実感がある事から、皆様も楽しめたのではないかというような気がしています。
ご協力頂きました皆様に、この場を借りてお礼とさせて頂きます。
有り難うございました。
あ、あの時アンケートをお配りするのを忘れてしまいました。
―――――――――――
深海へ行きたいですか?
□ はい □ いいえ
それではまた、次の夢の中で。
関連記事
超深海は宇宙の窓口?しんかい12000の秘話も聞いてきたよ – おち研